約 571,018 件
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1987.html
39 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 16 35 ID TyGkuzAn [2/20] 「ひづきんが風邪をひきました」 期末テストも近いある日の朝休みこと、俺は目の前の友人たちに向ってそう言った。 「ナルホド、あの黒くてちっこいのが見当たンねぇと思ったらそういうことか」 そう返すのは友人の一人、久々登場の葉山正樹(ハヤママサキ)。 白い半袖ワイシャツ(袖と胸ポケットに星座と月を象った、ウチの校章が入っているのがポイント)のボタンを上二つまで開け、すっかり夏モードだ。 「でも意外ね。みっきーのことだから風邪をひこうが足の骨が折れようが鮮血の結末しようが彼氏クンのところに来るものだと思ってたのに」 そういうのはもう一人の友人、というよりみっきーこと緋月三日の親友、明石朱里(アカシアカリ)。 こちらは半袖の白いブラウスに黒いベストを羽織っている。 胸元に校章の入った赤いリボンをつけていたり、スカートがチェック柄だったり、ウチの制服は男子より女子の方がオシャレ度が高いっぽい。 「本人はそのつもりだったらしいんだけどねー」 そこで、俺は微妙に声音を変える。 「『あまりに聞きわけがないので、力ずくでベッドに放り込んでおきました…』って連絡をくれた三日のお姉さんが」 「おー、意外に似てる」 俺の声真似に、なおざりに拍手する明石。 「あ、明石はお姉さんのコト知ってるんだっけ?」 「そりゃ、親友のお姉さんだし。ってか、去年の生徒会長だし」 明石が当然のように答えた。 そう言えば、三日のお姉さん、緋月二日(ヒヅキニカ)さんはこの夜照学園高等部のOG。 現在は同大学部1年生の19歳だ。 確かに、明石が知っていることに何ら不自然なことはない。 俺は当時、生徒会のことにさほど関心が無かったので、知ったのは割と最近だったが。 「生徒会長にして剣道部の鬼部長ってことで、知ってる人は知ってるわよ」 「鬼部長てどんだけ…」 明石の解説に、葉山が苦い顔をする。 三日への印象が悪いだけに、すさまじいものを想像しているのだろう。 それが間違っていると言えないのが、二日さんのすごいというか恐ろしいところだが。 ちなみに、そのお兄さんの一日さんは演劇部だった。 文化祭で女吸血鬼の役を演じ、男性ながら「血も凍るような美しさ」と評判だったとか。 40 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 17 09 ID TyGkuzAn [3/20] 「それで、今日の放課後お見舞いに行こうと思って。ユカリ先生からプリント類を渡すように頼まれてるし」 ちなみに、ユカリ先生はウチの担任。 長い髪を後ろで束ねた快活な女の先生だ。 担当は現代国語で陸上部顧問。 旦那さまと万年新婚の甘甘ラブラブ、とは本人の弁。 誰もその姿を見たことが無いので真実は不明。 「あ、そうなんだ。じゃあ、お大事にってみっきーに伝えておいてくれる?」 あっさりとした口調で明石は言った。 「何だ、明石は行かないの、お見舞い?」 「そうしたいのは山々なんだけど…ほんとーに山々なんだけど、私とみっきーは『友情<<<<<<(越えられない壁)<<<<<<恋愛』っていう共通の価値基準でつながってるから。アンタらを邪魔するようなヤボな真似はできないのよ」 肩をすくめて明石は言った。 少し名残惜しそうに言うあたり、本音なのだろう。 「ン?朱里、お前好きなヤツとか居ンのか」 明石の言葉に、葉山が怪訝そうに言った。 念のために補足すると、明石朱里はクラスメートにして幼馴染であるところの葉山正樹に好意を抱いているというお約束な状態にある。 肝心の葉山がそれに気づいていないのもお約束。 「そ、そう、だけど……!?」 目を白黒させたり顔を赤くしたり青くしたりしながら明石はわたわたする。 青春してるなぁ、コイツら。 「や、やっぱ正樹的には、知りたい?」 おお。 ドギマギしつつも顔を赤らめて上目づかいで葉山を見る明石の表情は、三日の居る俺でも感嘆するほどにかわいらしかった。 恋愛漫画ならクライマックスに丸1ページ使うレベルのかわいらしさだった。 「いや、別に」 もっとも、そのかわいらしさは葉山にはろくすっぽ分からなかったようだが。 「正樹のバカー!」 ばしぃ、と教室中に音が鳴りそうなほどの勢いで葉山が平手打ちをかまし、明石が立ち上がる。 「なんで気になんないのよ!せっかくアドリブでかわいいカオも作ったのにっていうかそっちから話振ってきたくせにー!」 そう叫んで泣きながら教室を走り去る明石。 「ちょ、おま!?もう授業始るぞ!?」 「正樹なんて知るかー!」 そんな明石を茫然と見つめる俺たち二人。 「……何だってンだよ」 「……青春ってコトじゃない?」 はたかれた頬を押さえてブゼンとした顔をする葉山に、俺は言った。 41 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 18 04 ID TyGkuzAn [4/20] さて、時間は飛んで放課後。 「部活もないからすぐに来ようと思ったら、ズイブン時間食っちゃったなあ」 『緋月』という表札のかかった、それなりに立派な作りの一軒家を目の前に、俺はつぶやいた。 ちなみに、今日何をしていたのかダイジェストで振りかえると… 休み時間 「正樹のバカ正樹のバカ正樹のバカ正樹のバカ正樹のバカ正樹のバカ正樹のバカ正樹のバカ……正樹なんてもう知らない……でも大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き……」 「はいはい。とりあえず、アイツには明石を怒らせたことだけは納得させたから、もうこんな時間だし、戻ろう?」 放課後 その1 「はい、これが緋月ちゃんに渡す分のプリント。しっかりきっちりよろしくね」 「分かりました、ユカリ先生。……って、もしかして、ネイル変えました?」 「そうなのよ!よく気づいてくれたね。これはアキ……じゃなくて旦那様がネットで選んでくれた色でねー(以下延々と語りだす)」 (わざわざ突っ込まなきゃ良かったかなー) 放課後 その2 「と、そろそろ三日のところへ…ってアレは、ウチのクラスのトショイイン(仮)じゃん」 「あ、御神くん。この本を全部図書室に運ばなきゃいけないんだけど、私ひとりじゃ持ちきれなくて……」 「分かった、俺も手伝うよ」 「ありがと。御神くんってちょっといい人よね」 「よく言われる」 「いい人すぎて恋愛対象としては見れないタイプ」 「よく言われる。って、見られても困るケド」 放課後 その3 「さあて、もういい加減三日のところへ……」 「あれ、木偶の棒が置いてあるかと思ったら御神ちゃんじゃない?」 「ああ、路傍の石だと思ったら一原先輩じゃないですか」 「ちょーどよかった。チョット手が入り用だから生徒会室に来なさいな」 「や、俺そんな暇でもないんですけど。どうしたんですか?」 「いやー、ちょっと痴情のもつれでもみあってたら、倒れてきた本棚の中に妹が生き埋めになっちゃってねー」 「どういう状況ですか…ってか一大事じゃないですか!?」 放課後 その4 「御神先輩、今日は緋月先輩がいないんですってね。どうですかどうですかこの河合直子とひと夏のアバンチュー「ごめんなさい」 「言い終わる前にフラれたー!」 42 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 18 25 ID TyGkuzAn [5/20] と、放課後はこんな風に八割方(例外あり)人助け的な何かだった。 「性分なんかねぇ……」 我がことながら苦笑しながら、俺はインターホンのスイッチを押そうとした。 『想定通りの…ジカン…に来たね』 スイッチを押す前に、インターホンから声が聞こえた。 『…ハジメマシテ…、私は緋月月日(ヒヅキツキヒ)。緋月三日の…チチオヤ…だ。少々軟禁状態の身の上だから外のお客さんと会うのは久しぶりでね、…ココロヨリ…歓迎するよ』 思いのほかよく通る、落ち着いた声音。 それが緋月月日さんと俺の初対面だった。 43 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 19 35 ID TyGkuzAn [6/20] 緋月月日(ヒヅキツキヒ)。 43歳。 和装の男。 緋月零日(ヒヅキレイカ)の夫。 そして、緋月一日、二日、三日の3兄妹の父。 職業は株式運用とIT関係のコンサルタント。 知的で落ち着いた、しかしどこか本心を読ませない美声。 病的なまでに白い肌。 180cmは余裕である高身長。 やせ形で、スラリとした体格。 と、言っても痩せぎすではなく、今時あまり見ない作務衣を見事に着こなす、同性の俺でも惚れ惚れとする均整の取れたスタイルの持ち主。 一挙一動がどこか優雅で、若い頃はとてつもなくモテたのだろうというのが顔を見るまでもなく推察できる。 と、言うよりそもそもその顔は見えない。 顔には全体を覆う鉄仮面。 その上首には鎖の付いたゴツい首輪。 その長い鎖がどこから伸びているのか、考えたくはない。 和装にして異装。 嫌でも警戒心を煽られる様相。 それに、忘れてはいけない。 この人は、とんでもない男なのだ。 妻である緋月零日(ヒヅキレイカ、どんな人なのかはまだ知らない)さんだけでなく、実の娘である二日さんにも手を出しているらしいのである。 44 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 20 59 ID TyGkuzAn [7/20] 「そんなに…カタク…ならないでくれよ」 俺を招き入れた月日さんは飄々とした口調で言った。 「この…カメン…は妻の意向でね。彼女に言わせれば、私の素顔は…ハンサム…過ぎて浮気を誘発するそうだ」 独特の溜めを作る話し方で、月日さんは続ける。 「居間に…アンナイ…しよう。何か用意をするよ」 「いえ、お構いなく。プリントとかを渡しに来ただけですしー」 月日さんの言葉に、やんわりと俺は言った。 「…エンリョ…はいらないよ。正直、私は君に興味を持っている。以前、二日からもらった情報だけではやはり不十分だからね。1つ、このおじさんにつきあってくれたまえ」 正直、俺的にはすぐ三日に会うつもりだったのだが、月日さんに促されるままにリビングに向かってしまう。 意外と強引だ。 清潔感のあるリビングに通され、ソファに座る。 しかし、思ったよりもお金持ちの家だ。 調度品にも嫌味にならない程度にお金がかかっているのが分かる。 上流とはいかないまでも、中の上くらい? このソファもわりかしフカフカしてるし。 「私と妻はいわゆる…トモバタラキ…という奴でね。双方ともにそれなり以上の稼ぎはあるんだ」 自慢する風でもなく、菓子の用意をしながら月日さんは言う。 「もっとも、数年前までは…ミカ…も病気がちだったから、金銭的な余裕ができたのはあの娘が中学に進級した頃からだけどね」 そう言いながら、市販のジュースとクッキーを添えて出してくれた。 小学生か、と思わなくもないが、折角出されたものを食べないのもよろしくない。 「いただきます」 俺はクッキーに手を伸ばして言った。 「高校生の若者としては、恋人の家族というモノは…タイクツ…かな?」 クッキーをほおばる俺に、月日さんは穏やかな声で言った。 に、しても『恋人』か。 改めて言われると、くすぐったいフレーズだなぁ。 「そんなことは無いですよー。アイツの……三日さんのお兄さんやお父さんとは以前からお会いしたいとは思っていましたし」 過保護、だとは思うが。 いや、どうなのだろう。 他所の家庭のことはよくわからない。 「…ナルホド…。分析するにどちらかと言えば…カズヒ…の方に会いたかった、というのが本音のようだね」 ドキリ、とすることを言ってくれる。 月日さんの言うように、むしろ一日お兄さんの方が気になっていたところはあった。 だって、お兄さんを語る三日ってどこかキラキラしてるんだもの。 隠してるつもりらしいけど、明らかにブラコンだもの。 ヤンデレって設定が崩れかかるレベルで。 もし、三日の攻略にライバルがいるとしたら明らかに一日さんだろう。 「悪いね。…カズヒ…の奴が行方不明で」 「行方不明!?」 月日さんが、何でもないことのようにすごいことを言った。 溜めを作る場所を明らかに間違ってないですか。 「まぁ、行方不明と言っても心配はいらない。元々、時折…フラリ…といなくなる性質だったからね」 月日さんは何でもないように言うが、それはそれでどうなのだろう 「どこかで野垂れ死んでなければ、今頃…イギリス…かどこかの屋敷を乗っ取って、芝居がかった口調の胡散臭い家主をやってる頃じゃないかな?」 胡散臭いとかあんたが言うな。 「何で、そんな両極端且つ具体的な推測なんですか?」 「…ハッハッハッ…」 俺がそう言うと、笑って誤魔化された。 いや、仮面姿だから本当に笑ってるのかは分からないけど。 全く持って本心を、正体を読ませない人だ。 赤黒く光るその鉄仮面の下にどんな素顔が隠されていても驚かないかもしれない。 本当に、やり辛い相手だ。 45 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 22 05 ID TyGkuzAn [8/20] その時、ふと目の前のテーブルの上の雑誌が目に入った。 『TVプラス』、『特撮NEW-LIFE』、『特撮宇宙』、『スーパーヒロインタイム』などなど、テレビ番組や特撮番組関係の雑誌が置かれていて、いずれも1人の女の人が表紙を飾っているのが共通していた。 華奢で小柄な女性である。 年齢は十代前半、小学校高学年か中学生くらいに見える。 ツインテールにした長い黒髪。 雪のような白い肌。 身につけている衣装は、体系を隠すほどにフリルを多用した、黒を基調とした毒々しいゴシックな服。 所々に髑髏の異称が入っており、ゴスロリとゴスパンクを足して2で割ったようなデザインだ。 そんな衣装とは対照的に、くりくりとした大きな眼をしていて、桜色の唇には無邪気な笑顔を浮かべている。 『そっち』の趣味が無い人でも、思わず頭を撫でたり愛でたりしたくなるかわいらしさをもった女性だ。 雑誌には、彼女の笑みに不釣り合いなおどろおどろしい字体で『悪のヒロイン特集』、『超人戦線ヤンデレンジャー・零咲えくり(魔女大帝役)独占インタビュー』といった文字が躍っている。 ヤンデレンジャー、というのは休日朝に放映されているヒーロー番組で、魔女大帝というのはその悪役、狂愛帝国のボスだ。 俺の父もメイクとして撮影に携わっている番組で、そのよしみで俺もしばしば視聴している。 そう言えば、前に三日も「家族で特撮番組を観てる」とか言ってたっけ。 それにしても、視聴者の女児とロリコンオタクに大人気の魔女大帝が表紙の雑誌ばかり買い集めることもないだろうに。 何も知らない訪問者が、家族に女児かロリコンオタクのド変態がいるものかと誤解してしまうではないか。 「・・・ロリ・・・は良い。ヒトのつくりし文化の極みだよ」 月日さんが、しみじみとした口調で言った。 ってオイ。 「いや、間違えた。・・・ゴスロリ・・・は良い、だった。・・・ロリ・・・では事実に反しているからね」 「・・・・・・」 月日さんが言い直すのを、俺は渋い顔をしながら聞いていた。 本当に言い間違いだったのだろうか。 46 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 22 44 ID TyGkuzAn [9/20] 「それで、千里くん。…ミカ…とはヤッたのかい?」 「ぶほぁ!」 ジュース吹いた! 不意打ち気味の月日さんの言葉に、俺は咽ながらもハンカチでテーブルを拭く。 「良い・・・リアクション・・・くれるね、君」 咽る俺を見ながら、月日さんが飄々として言った。 「ゲホ、ゴホ…ず、随分とストレートにお聞きになるんですね」 ストレートどころじゃねぇ! 娘のヤッたヤらないなんて話を普通にする父親がいるか!? さっきのセリフといい、変態か、変態仮面なのか、この野郎!? 「その様子だと…マダ…のようだね」 「人間嘘発見器ですか……?」 そう言えば、この人はあの二日さんのお父さんなのである。 いくら首から下はマトモっぽくても、二日さんに匹敵する発言をかましてきても不思議では無かった。 ……って言うか、二日さんのエロトークはお父さん譲りか。 あの人のエロの師匠はアンタか、月日さん。 「つまり、まだ…アトモドリ…が効く段階というわけか。道理で三日が日々気に病むわけだ」 「や、俺ら割と世間でらぶらぶ(笑)だと評判ですよ?」 特に、エロ大王の生徒会長からとか。 美少女に目が無い会長閣下は、やはりというか何というか、一時期三日に目をつけていたことがあったらしい。(性的な意味で) それもあって、しばしば冷やかし半分にはやしたてられるのだ。 あの人も大人げないというか何というか。 その代り、いろいろ助けてくれているのであまり悪くばかりも言えないのだけれど。 「私が君くらいの歳の頃は…ヤリマクリ…だったものだがね」 「それはそれでダメだろがこの変態仮面!」 しまった、つい本音が。 「あ、スイマセン」 「いや、…カマワナイ…。自分がどう見られているのかくらいは検索済みさ」 本当に気にしていない様子で彼は言った。 「ただ、三日の若々しく瑞々しい肢体は親からみても…ミリョクテキ…だからねぇ。知ってるかい、あれでも脱げば意外と…」 「脱がしたんじゃねーだろなテメェ!」 緋月月日、娘の二日さんに手を出している容疑のある42歳である。 「失礼な。私は家族を…タベチャイタイ…くらい愛している美形中年だよ」 「性的な意味で!?」 「まったくもってその通り」 「肯定したー!」 引いた。 さすがに引いた。 具体的には5キロくらい。 「ハハハ。そんなに引かなくても大丈夫さ。…タベタ…とは言ってないだろう?」 「そ、それもそうですね。すいません・・・・・・」 「三日に…ダケ…は手を出して無いさ」 「今『だけ』って言ったー!」 「…ハッハッハッ…」 笑ってごまかすな。 「こんなもの…ジョウダン…だよ、冗談」 「じょ、冗談ですか……」 「…ザレゴト…でも良いがね」 笑いながら言う月日さんに、ホッと胸をなでおろす。 そうだよなー、妻と娘とで二股、とかエロゲーみたいな展開はそうそうないよなー。 「……と、言うことに…シテオコウ…」 「今小声で何て言いました!?」 「…ジョウダン…だよ」 心臓に悪い冗談は止めてほしい。 「と、言うか千里くん。私の言うことを…ホンキ…にしているときりが無いよ」 どこか、シニカルな声音で、月日さんは言う。 その表情の読めない仮面の下で、彼がどんな顔をしているのか、俺には想像もつかない。 「私は、…ウソツキ…だからねぇ」 47 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 23 20 ID TyGkuzAn [10/20] 「…カイダン…を上って一番奥が三日の部屋だよ。これは…ホントウ…」 月日さんからそんな説明を受けて、俺は緋月家の階段を上っていた。 月日さんは案内と称して俺に付いてくる気満々だったが、いきなりかかってきた一本の電話によって阻止された。 今も階下から「ウワキじゃないウワキじゃない。誰ともリビングでフタリッキリになんてなっていない。ウン、なってないから。それよりレイちゃんこれから撮影だろ。いやいやゴマカシテ無いって」という月日さんの声が聞こえる。 ちなみに、レイちゃんこと零日さんとは月日さんの妻、つまり三日のお母さんだ。 「あんな捉えどころの無い人が旦那さんだと、零日さんたちも大変だ」 俺は1人ごちた。 いや、今しがた俺が一番大変だった気がするが。 見事なまでに、月日さんに遊ばれていた。 とはいえ、月日さんは仮面野郎な上にかなり胡散臭い人だったが、同時に家族に対する愛情は深い人のように感じた。 彼自身、家族に対する愛情は『タベチャイタイ』くらいなんて言っていたし。 軟禁状態、なんて嘯いていたけれど、家から出ようともしない(仕事は専らネットを通して行っているそうな)のは、家族といる時間を増やすためなんじゃないかな、なんて思う。 楽観的で非現実的な邪推なんだろうけど。 「ウチの家族とは、全然違うなぁ」 良くも、悪くも。 ウチは親一人子一人というたった二人の家族で、親は家を空けている時間が圧倒的に長い。 と、言うより、俺達2人が会ったり話したりする時間が圧倒的に少ない。 甘えたい盛りの時にはそれがひどく寂しくて、駄々をこねて親を困らせたこともあった。(だからなのか、しばしばささやかなことで嫉妬心を抱く三日の気持ちは何となく分かる気がする) その事実は、ささやかな傷跡ではあるけれど、それでも、俺に対しては十二分の教育費と愛情を注いでくれていると思うし、今更それに不平不満を言うつもりはない。 けれど、誰かが待ってくれてる家というのも、誰かを待てる家というのも… 「羨ましく思わなくもない、かな」 そこで、階段を登りきる。 奥から三番目の部屋に、『☆三日チャンの部屋☆』というえらいファンシーなプレートがかかっている。(誰が作ったんだろう?) 「……一番奥じゃないじゃないか」 ちなみに、その隣は『二日乃部屋』と筆で達筆に書かれた飾り気のないプレートがかかっている。 廊下のゴミ箱に三日のと同じような、ファンシーな奴のが捨ててある気がするが気のせいだろうか? そのまた隣、一番奥の部屋には『KAZUHI S ROOM』と流麗な筆記体で書かれたプレートがかかっている。 そのプレートやドアノブにはやや埃がかぶっており、持ち主が短くない期間戻っていないことを伺わせた。 「月日さんも、全部が全部嘘を言ってたわけでも無いみたいだな」 とりあえずそれだけを小さく呟いた。 ともあれ、今は三日だ。 俺は彼女の部屋を軽くノックして声をかける。 48 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 24 03 ID TyGkuzAn [11/20] 「三日、俺、御神。風邪ひいたって聞いて、お見舞いにきたんだけど、入っていいかな?」 お見舞いなんて初めてだから、なんとなく妙な台詞になってしまう。 「…はい、大丈夫ですよ。朝からずっと」 すると、扉の向こうから聞きなれた儚げな声が聞こえてきた。 心なしか、いつもより弱々しく、低い声に聞こえる。 風邪のせいだろうか。 「じゃあ、入るね」 そう言ってドアノブをひねろうとして、俺はふと思う。 思えば、三日の部屋にくるのなんて初めてである。 と、言うより女の子の部屋に入ること自体初めてなんじゃなかろうか? このドアの向こうには、どんな光景が広がっているのだろう。 ぬいぐるみとかが置かれたかわいらしい、女子然とした部屋だろうか?(イメージ貧困) それとも、ヤンデレなお母さんの教育の行き届いたおどろおどろしい部屋だろうか? その上、三日の部屋着(パジャマだろうか)が見れたりするわけで… 「・・・・・」 自分の顔が熱を帯びるのを感じる。 三日の部屋なのに!たかだか三日の部屋なのに!(だからこそだバカ) とはいえ、扉の前で固まっていても仕方ない。 鬼が出るか蛇が出るか? 天国か地獄か? いざ行かん、本作メインヒロインのプライベートルームへ! 「……ってあれ?」 そこは、見慣れた光景だった。 使い古された小ぶりなクローゼット。 机上に、昨日宿題をした時のままシャーペンや消しゴムが無造作に置かれた勉強机。 その隅に置かれた、使い古しのシルバーのノートPC。 三段の本棚は、一番上が文庫や新書、二番目がマンガ、三番目が料理の本や雑誌がギッシリ詰まっていて、この月曜に買ったばかりのマンガ雑誌も収まっている。 その上には春休みにバイトした金で音楽プレイヤー用スピーカー(一応特撮グッズで、所々にヒーローのシンボルマークが刻まれている)が置いてある。 その向かいには白い蒲団が敷かれたベッドがある。 明らかに男子の部屋だった。 って言うか俺の部屋だった。 さすがに、窓の形や部屋の広さは微妙に違ったが、それ以外のレイアウトは気味が悪いほどに、同一だった。 ペアルックならぬ、ペア部屋ってヤツ? 好きなアイドルと同じグッズを身につけるファン、というのは聞いたことはあるが、それにしたって部屋まで一緒にするなんて話は聞いたことも無い。 「ただい……ま?」 思わずそう言った。 「…おかえりなさい、千里くん」 三日が、それにナチュラルに答えた。 49 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 25 34 ID TyGkuzAn [12/20] しかし。 しかしである。 そんな描写はこの際どうでもいい。 それを遥かに上回るような桃源郷がそこにあった。 と、言うかいた。 三日である。 三日は洋装のパジャマを着ていなかった。 代わりに、浴衣を着ていた。 浴衣姿の三日である。 浴衣女子の三日である! この衝撃がお分かりいただけるだろうか。 三日は何度となく純和風の容貌と言われ続け、和服が似合うであろうことは想像に難くなかった。 (実際、以前はよく身に着けていたらしい。俺は見たことが無いが) それが今目の前にいる。 浴衣のデザイン自体は、黒字に鮮やかな彼岸花をあしらった、地獄少女も真っ青な重苦しい柄である。(あの変態仮面か二日さんのチョイスだろうか。あの人たちとは色々な意味で話し合う必要がありそうだ) しかし、黒いだけに所々にのぞくまっ白い肌が際立つというコントラスト。 その上、三日のカラスの濡場色の見事な長い髪が浴衣の上にかかることで得も言われぬ美しさを醸し出している。 その黒髪が、少し首を動かすだけで、はらりと胸元に移動する。 やや乱れ、ゆるやかなカーブを描く胸の谷間が露になった純白の胸元に。 その上、風邪をひいている為か頬は朱に染まり、いつになく艶っぽい雰囲気をかもしだしている。 その光景に、俺は思わず生唾を飲み込んだ。 女の子って、服装ひとつでこんなに雰囲気が変わるんだ・・・・・・。 「・・・お待ちしておりました、千里くん」 その場に立ち尽くしている俺に、彼女が言った。 桜色の唇が動くのが、やけに色っぽい。 「あ、ああ・・・・・・」 いつまでも硬直してもいられない。 俺は無理やりにも我に返る。 「これ、先生から預かったプリント。机の上に置いておいて良いかな?」 鞄の中からファイルを取り出して、俺は言った。 「・・・そんなことよりも、こちらに来ていただけませんか?適当に、このベッドにでも座って」 風邪のせいか、いつも以上にどんよりと濁った黒い瞳をこちらに向けて三日は言った。 「んじゃぁ、この机の所にでも……」 「このベッドに座って」 机の上にファイルを置き、椅子に座ろうとする俺に三日は先ほどの言葉を繰り返す。 ってあれ、なんか変わってない? 「いや、そこには座れないっしょ。俺なんかが来たら一気に狭「座、って」 三日の台詞が一言だけになった。 俺はその言葉に従い(断じて三日の色香に圧倒されたわけではない)、彼女の眠るベッドに座る。 ベッドを揺らしたり三日の足をつぶさない様にしながら。 50 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 26 36 ID TyGkuzAn [13/20] 「・・・千里くん」 俺が座り終えるか終えないかくらいのタイミングで、三日がガバッと抱きついてきた。 首筋に飛びつくように、腕を絡め、体重をこちらに預けてくる。 上半身が密着状態になる。 「!?!?」 密着状態になったことで俺の顔に三日の絹糸のように柔らかな髪があたるとか、あたってるのはむしろ柔らかな胸だとかって何で俺こんなことでパニクってるのかな!? 「・・・ん、はむ・・・、ぅん、ぴちゃ・・・」 「ゥン!?」 やおら、首に柔らかな感触が連続して触れる。 これは、もしかして舐められてるのか? 首を? 三日に? うわぁ。 何だ、この言い知れぬ背徳感は。 法的に何ら問題ないことをしてるはずなのに。 「・・・れろ、はむ・・・、うん・・・」 「ん、くぅ・・・・・・。み、か・・・・・・」 三日が、俺よりも年下にも見えるような小柄な少女が、体を密着させて俺の首に舌を這わせている。 その動作のたびに、長い髪が蛇のようにうねる。 一頻り舐め倒すと、三日は俺の体から離れた。 何だか知らんが、キスよかエロかった。 もう数秒続いてたら理性がトんでたかもしれない。 と、そんな色惚けな頭をすっ飛ばす台詞がこちら。 「・・・他の女の匂いがします」 「いや、今舐めてたよね!?」 ああ、良かった。 ようやくいつものノリに戻った。 これ以上エロい空気が蔓延していたらどうなっていたことか。 まぁ色々間違ってる気はするが。 「・・・4人、いえ5人くらいですか?」 「いやいや、どこまでカウントしてるのさ」 たしかに、今日俺は4人の女性と話した記憶はあるが、だからといってやましい事は一切無い。 「・・・5人、殺さなくっちゃ」 黒曜石のような瞳に空ろな笑みを浮かべて三日が言った。 この上なく禍々しく、それ以上に危うい笑みを浮かべて。 って言うか普通に危なっかしい。 「実行不可能なことを言うな」 「ふみゅ!?」 俺は、半ば無理やりに三日の上半身をベッドに押し戻した。 「って言うか、今は体を休めることだけ考えなよ。あと、俺はそのヒトたちとは何も無かったから」 「・・・それでも」 三日が食い下がる。 「・・・私と千里くんの会う時間を奪った相手なんですよ?妨害したんですよ?邪魔者なんですよ?殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと。お姉様、朱里ちゃん、ユカリ先生、トショイインさん、会長さん、河合さん、みんなみんな殺ざ・・・ゲホゲホ」 言い終わる前に咳き込む三日。 風邪をひいていると言うのに、長台詞なんか喋るからだ。 51 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 27 43 ID TyGkuzAn [14/20] 俺は、半ば無理やりに三日の上半身をベッドに押し戻した。 「って言うか、今は体を休めることだけ考えなよ。あと、俺はそのヒトたちとは何も無かったから」 「・・・それでも」 三日が食い下がる。 「・・・私と千里くんの会う時間を奪った相手なんですよ?妨害したんですよ?邪魔者なんですよ?殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと。お姉様、朱里ちゃん、ユカリ先生、トショイインさん、会長さん、河合さん、みんなみんな殺ざ・・・ゲホゲホ」 言い終わる前に咳き込む三日。 風邪をひいていると言うのに、長台詞なんか喋るからだ。 「誰も俺らを妨害しようなんて思っちゃいないでしょ。むしろ、明石なんてお見舞い来たがってたし。あと、さり気なく二日さんを加えない。明らかにお前を心配してるし」 カバンから出したのど飴を三日にほうりつつ、俺は言った。 二日さんは『力ずくで』なんて言ってたけど、要は三日に安静にして欲しかったわけだし。 あの人は妹に対してツンデレ過ぎると思う。 「・・・・・・・・・」 のど飴を受け取ると、三日は布団をかぶり、恨めしげな目だけを俺のほうに向けてきた。 「今日は、やけに病みモードじゃないか、風邪だけに」 「・・・今日はずっと、待ってました。誰もいないこの部屋で」 とうとうと語りだす三日。 「家にはご家族がいたでしょ」 それに対して俺は本心からツッコミを入れた。 つい先ほど、俺は家族のいる家庭の良さをかみ締めたところである。 「二日お姉様は大学の授業で朝からいませんし、お母さんは今日お仕事で帰りません。お父さんは・・・」 「2人っきりか!それは大変だ!っていうか危険だ!」 畜生、よりにもよってあんな変態仮面とうら若き乙女を2人きりにするなんてどういう了見だ! 「・・・なんだか、うちの父親がとんでもない変質者の類として千里くんの脳に登録された気がします」 「違うの?」 「・・・・・・・・・そういう話ではなくてですね」 三日が、目をそらした。 話もそらした。 「・・・私はずっと待っていたんです。ただ、待っていたんです」 「何を?」 「・・・何もできずに、何も飲まずに、何も食べずに」 「食べれ!しっかりきっちりご飯食べて栄養とらないと治るもんも治らないって!」 「・・・薬だけを呑んで」 「薬じゃ足りないって!ちょっと待っててよ・・・」 とりあえず、月日さんにお願いして台所を借りよう。 他所の台所を借りるのは気が引けるが、何か作って食べさせないと・・・・・・ しかし、 「・・・駄目」 立ち上がった俺の手をしっかりと掴み、三日は言った。 「遠くに行くなんて駄目。離れるなんて駄目。駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄けほ駄目駄目駄目けほけほ駄目駄目駄目駄目駄目駄ゲ駄目駄目駄目駄目駄目駄目ゲホゴフぇえ」 咳き込んでも言葉を続けようとしたため、三日はよりひどい咳をすることになった。 「ゲホ、ゴホ、ガフォア!」 「ちょ、大丈夫!?」 「ゴホガホゲホガホゲボドホバドー!」 「咳どころじゃねぇ!」 いつのまにか、俺はまた座って三日の背中をさすっていた。 三日は激しくせき込みながらも、掴んだ手を放そうとしなかった。 その小さな手は、なんとなく、どこかさみしげに見えた。 「もしかして、今日ずっと会えなくて寂しかった……とか?」 「…ゲホ…ガハ……コクン」 俺の言葉に、三日は咳き込みながも頷いた。 「…ずっとずっと来てくれないから、気が狂うかと思いました」 きゅっ、と俺の手を握りながら三日は言った。 その手を、俺は優しく握り返した。 「俺も、お前と会えなくて、何か、ヤな感じだった」 「…ヤな感じ?」 「具体的には、弁当を作る気が失せるくらい」 「それは相当です!」 三日が驚愕の表情で言った。 俺って、そんなに料理キャラかしら。 52 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 28 47 ID TyGkuzAn [15/20] 「それこそ相当……、でもないか、普通だ」 「…むしろ、それ以外では動きません」 「それは重症だ!」 まさかとは思うが、本当にそういう設定じゃあるまいな。 そのちんまいボディーはその伏線とか? 「…あ、いえ。これは、多分昔身体が弱かったかららしいです」 少し恥ずかしそうに、三日が言った。 そう言えば、月日さんがそんなことを言っていた気がする。 「…お腹とかに、昔の手術跡が残ってたりしてちょっとニガテなんですけれど…。そういうの見たい、ですか?」 「いやいやいやいやいや」 浴衣姿でお腹を見せようとすると、ほとんど半裸になるじゃないの。 この辺、どこまで計算なのか天然なのか分からないから困る。 「そうじゃなく―――って、何の話をしていたんだっけ?」 何やら流れがグダグダになってきたので、軌道修正軌道修正。 「…私が寂しかったという話?」 「浴衣の三日がエロいって話?」 同時に言って、同時に赤面。 「…恥ずかし……。恥ずかしすぎる……。素直に『寂しい』とか恥ずかしすぎ……」 真っ赤な顔を隠すように、三日が被った布団の中からそんな呟きが聞こえてくる。 かく言う俺も、悶絶していた。 いや、だってありえないだろう。 女の子を目の前に『エロい』とかセクハラだろう。 自分で自分の首を絞めるにも程がある。 「や、違くて、ただ、すごく可愛いって―――可愛い?ってか綺麗ってかなんと言うか」 俺の言い訳にもならない言い訳に、ベッドの中で悶絶していた三日の動きがピタリと止まる。 「・・・・・・・・・褒められた」 ぎゅう、と三日が体を丸めるのが分かる。 「・・・・・・・・・褒められちゃった」 そう呟く三日の声は、本当に幸せそうで、思わずこっちまで幸せな気分になるようで。 「・・・あの、千里くん」 布団の中から、三日が囁く様な声で言った。 「・・・私、綺麗ですか?」 「どこぞの都市伝説みたいな聞き方すな」 マスクをはずしたらすごいことになったりしないよな。 「・・・綺麗、ですか?」 三日が再度言った。 ギャグで誤魔化されてくれなかった。 「まぁ・・・綺麗だけど。浴衣との相乗効果で」 隠す理由もないので、俺は意味なく目を逸らしながら言った。 浴衣云々はほとんど照れ隠しだけど。 って言うか、三日にここまで萌えさせられるなんて思わなかったのですよ。 そうか、三日って萌えキャラだったのか・・・・・・。 初めて知った。 「・・・浴衣が無いと、駄目ですか・・・・・・」 シュンとした声で三日が言うので、フォローする。 「いやいやいや。ンな意味じゃないって。確かに浴衣は偉大だけど、あくまで服で添え物、おまけみたいなモンでさー・・・・・・」 いつものペースを取り戻しつつ、俺は言葉を続ける。 「これは親が良く言ってたんだけど、服とか化粧ってのは元来身に着けてるヤツの良い所を120パー引き出すのが理想だとかで、今の三日がその状態?みたいな?」 なぜ疑問系だ、俺。 「・・・浴衣が無くても綺麗ですか?」 布団の中から、目元だけを覗かせて、三日が言った。 「YES!YES!YES!YES!YES!」 なぜジョジョだ、俺。 「・・・なら」 言って、三日は布団の中から上体を起こす。 そして、既に緩くはだけられた浴衣の襟に手をかける。 「・・・これでも、綺麗だって言ってくれますか?」 53 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 29 26 ID TyGkuzAn [16/20] 微かな衣擦れの音を立てて、三日の体から浴衣が落ちる。 「え、ちょ・・・まっ!?」 俺の心の準備など待つはずも無く、三日の裸体が露になる。 染みひとつ無い、真っ白な肌。 小さな肩。 折れそうな程に細い、けれど伸びやかな腕。 緩やかなカーブを描く胸には桜色の乳首。 やや痩せ過ぎなきらいはあるが、細い腰。 そして、胸元から腰にかけてまで、痛々しい傷痕。 手術痕。 決して、目立つようなものではない。 けれど、無垢な真っ白な肌にあるからこそ、その傷跡は目立つ。 真っ白な紙の上の、たった一点の染みが目立つように。 しかし、 「・・・・・・綺麗だ」 俺は、その傷痕を観て心からそう答えた。 「・・・本当に?」 「もちろん」 おずおずと聞く三日に、俺は即答した。 「・・・気持ち悪くないですか?」 胸の傷をなぞるようにして、三日が問いかける。 「何で?」 割と素で、俺はそう答えた。 確かに、その傷跡は目立つ。 目立つけど・・・・・・ 「何ていうか、男の勲章、みたいなものでしょ?」 「・・・私、女ですよ?」 もっともなツッコミだった。 うーみゅ。 言語化しづらいニュアンスをうまく伝えるのは難しい。 「俺は経験無いから分からないけど、そういう手術ってやっぱ受ける方も大変らしいじゃない。だから、その傷跡は―――」 傷跡、を直接触るとセクハラなので、それをなぞっていた三日の手を握る。 「三日が頑張った記録じゃないか」 「・・・千里・・・・・・くん」 その手をぎゅっと握り返す三日。 「・・・ありがとうございます、千里くん。・・・この傷跡は、裏設定的にちょっとコンプレックスみたいなものだったので。・・・お医者様からは、その内目立たなくなる、とは言われているのですが」 確かに、ビキニの水着とか着れないだろうからなぁ。 まぁ、体型的に着ても似合わなそうだけど。 「そっか。ちなみに、俺の裏設定的なコンプレックスは身長だったり」 「ええ!」 俺の発言に驚いた顔をする三日。 「・・・すごいかっこいい長身なのに」 「だからだよ。『御神くんおっきくて怖い』なんてガキの頃何回も言われてさー。ほら、背が高いとどうしても見下ろす感じになるでしょ?それがどうにも相手をビビらせちゃって」 今思えば、昔の俺に愛想が無かったからでもあるんだろうけど。 「・・・私はちっちゃいから、大きいのは怖いというより憧れますけど」 「ああ、二日さんとか」 「・・・あとは、女装したお兄ちゃんとか」 すさまじい美少女らしいからな、女吸血鬼一日さん。 2人して人間的なスペックも高いし。 美形で身体能力も高いらしいんだものなー。 一日さんは更に成績優秀、の文字が追加されるが。(ちなみに、二日さんの学校の成績は人並み程度。必要なこと以外には本気出してなかった可能性も高いけど) 少女漫画の主人公かよって感じである。 そんな相手に囲まれていたら、確かに長身に対する憧れは助長されるか。 っと、それはともかく。 54 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 29 49 ID TyGkuzAn [17/20] 「ええっと、三日サマ」 「・・・何でしょう、千里様」 「体も冷えますし、そろそろ服を着て下さいませんでしょうか」 今更のように目を逸らしつつ、俺は言った。 特に描写はしてなかったけど、今までずっと俺の顔真っ赤だったんだろうなー。 「そんな!」 驚いたように三日は言った。 その対応は不条理だと思う。 「・・・綺麗って言ってくれたから、私を押し倒してきてくれるかとばかり思っていたのに!」 「押し倒すか!」 何を血迷ったことを言ってるんだこの病人は。 やっぱりアレか? 月日さんのせいか? あの変態仮面、娘の教育に悪影響しか与えて無いんじゃないのか? 「ンなことしたら風邪が治らないでしょうが」 「・・・治らないんですか?」 「具体的な原因を皆まで言わせないでー!」 とにかく、さっさと着せないと三日の健康にも、ビジュアル的にもよろしくない。(2m近い男と半裸の小柄な女の子―――犯罪の臭いしかしねぇ) 俺は、三日のはだけた浴衣を手に取り――― 「時を越えて、私、参上・・・」 背後のドアが音も無く開かれ、1人の女性が現れた。 黒髪ロング、長身の美女。 「・・・・・・コンニチハ、ニカサマ」 「ええ、御機嫌よう・・・。義弟くん・・・」 俺が何とか答えた相手、三日の姉二日さんはうっすらと笑った。 半裸の妹さんと、彼女の服を掴んでいる男。 それを二日さんがどう解釈するかは明白な訳で・・・・・・ 「・・・こ、これは違わないけど違うんですよ、お姉様」 「良いんですよ、別に・・・」 要領を得ない三日の言葉に、やはりうっすらと笑いながら二日さんは言った。 ただし、笑っているのは口だけで、目は全く笑っていない。 「私は別に妹が心配で早く戻って来たわけでもありませんし、妹が義弟くんに抱かれようが肉奴隷にされようが一向に気にしませんわ・・・。ただ・・・」 二日さんの光を反射しない瞳が、こちらを射抜くように見つめている。 「最近私はお父様とご無沙汰だったというのに、それを差し置いてまだ明るい時間から乳繰り会っている様子を目の当たりにしていると湧き上がるこの気持ちは、何なんでしょうね・・・?」 「・・・愛情?」 三日の言った空気の読めない一言に、二日さんの堪忍袋の尾が切れた音が聞こえた気がした。 「ありがたく思いなさい、2人とも・・・。お仕置きタイムです・・・」 「「ぎゃー!」」 それこそ吸血鬼を通り越して鬼のような顔になった二日さんを前に、俺たちは仲良く悲鳴を上げた。 その後の地獄絵図に関しては・・・・・・思い出させないでくださいすいません。 55 名前:ヤンデレの娘さん 見舞の巻 ◆DSlAqf.vqc [sage] 投稿日:2010/12/06(月) 01 30 30 ID TyGkuzAn [18/20] おまけ 数日後 「ンで、しばらく2人して休んでたワケだけど、そんなことが会ったのねぇ」 体中にたくさんのガーゼや絆創膏を貼り付けて学校に来た俺達2人を見て、明石が言った。 「別に、二日のせいばかりじゃないけどねー」 俺は方をすくめて言った。 「・・・千里くんは、ずっとずっとずーっと、私につきっきりで看病してくれたんです」 ぎゅ、っと俺に腕を絡ませて三日は言った。 柔らかな胸の感触が、あの時を思い出させるんですが。 「俺はてっきり、みかみんが監禁陵辱されてんじゃねーかと心配してたンだぜ」 葉山が言った。 「かんきんりょーじょくって・・・・・・まぁ、ある意味それに匹敵するほどすさまじいことがあった気はするけど」 仮面のおっさんに、お仕置きタイム、それに・・・その・・・三日のもにょもにょ・・・ 人生で最高に『濃い』数日間だった。 「ああ、やっぱり手遅れだったか、みかみん」 何を思ったか俺のほうを真顔で見る葉山。 「まぁ、その何だ。まだ野良犬にでも噛まれたものだとおもえばな、ウン」 「いや、たぶんそれ違う・・・・・・」 妙な勘違いをしたっぽい葉山に、俺は渋い顔で言った。 「いやぁ、愛する人にされるならアレでしょ?『我々の業界ではご褒美です』ってヤツ」 まるで当然のように明石はそう言って、それから自分の言葉に落雷を落とされたような顔をする。 「その発想なら・・・・・・私が正樹に何をしてもご褒美!?」 そう言って、明石は葉山の肩をがっしり掴んだ。 「正樹、ご褒美欲しいでしょ?」 「何だか知らんがそんなご褒美はいらねー!」 相変わらずフラグを叩き折るはやまん。 「欲しいでしょ?」 「いらねぇ!」 「欲しいよね?」 「だからいらんて!」 「欲しいはず」 「いらねぇっての!」 「欲しい」 「いらん!」 「欲しれ」 「何だその欲しいの命令形みたいなの」 「欲しがりなさいよ!」 「だからいらねぇって!」 そんなやり取りが、教室にユカリ先生が来るまで続いたのは、また別の話。
https://w.atwiki.jp/niconicokaraokedb/pages/654.html
ヤンデレP やんてれひい【登録タグ クリエイター 作や】 曲一覧 哀撃貴鋼-Aigekikikou- 雨弾凶奏-Udankyousou- 激嬢想歌-Gekijyousouka- 重恋歌-Jyurenka- 鮮血誓歌-Senketsuseika- 旋律王姫-Senritsuouki- 続・魔王嬢-MaoujyouⅡ- 氷葬歌-Hyousouka- 重恋歌-Heavy Love Song- 魔王嬢-MaoujyouⅠ- コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1496.html
234 :ヤンデレ素直クール:2010/03/03(水) 01 27 55 ID 29tgcKcv 第四話 3レス消費 翌朝、明が目を覚ますと、目の前には律の顔があった。 いつも学校で見ている、彼以外にはほとんど感情を示さない鉄面皮とは正反対の寝顔。 ありえないほど緩んだ表情と静かな寝息で、幼くさえ見えてしまう。 明は、幸せそうな寝顔に思わず顔をほころばせながら起こさないように身体を起こした。 携帯電話のチェックをしたかったのである。 案の定、メールが何件か来ている。が、なぜか個別のフォルダに入っていない。 メールを開いて見たがおかしい。友人のものまで未設定フォルダに入っている。 しかも、名前でなくアドレスが表示されている。 アドレス帳から削除した覚えは無いにも関らずだ。 慌てて明はアドレス張を確認する。 『おかしい・・・。無くなってる。』 確かに、あったはずのアドレスが一部なくなっていた。 先ほど入っていた友人の登録も無い。 『誰のがなくなったんだ・・・?ていうかなんで?』 頭がうまく働かない。昨日からずっとこの調子である。 それでも思いつく限りの知り合いの名前を片端から調べていく。 妙なことに、女性の登録だけが抜けているようだった。 学校にいた時まで異常なかったのだ。 とするとアドレスが消去されたのは下校以降。 『もしかして、律、なのか・・・?』 それ以外考えられない。 律を呼ぼうと明が振り向こうとした時、後ろから抱きつかれた。 「アドレス帳、見たんだな。」 律だ。どこか浮き浮きとした声に調子が狂う。それでも怒気をこめて返事した。 「ああ・・・。ていうか、これ・・・。」 それなのに律にはまるで届かない。 「ふふ、どうしたんだ?怖い声を出して。」 流された明は耐えられずに声を荒げた。 「どうしたもこうしたも、まず他人のアドレス帳をみるとかありえないだろ?」 「しかも、女のだけ削除するなんて、何の意味があって・・・」 235 :ヤンデレ素直クール:2010/03/03(水) 01 31 54 ID 29tgcKcv そういった瞬間、明の首に腕が巻きついた。 「なぜだ。」 律の冷厳な声。 「まず一つ目。なぜ他人なんだ?明と私は恋人だろう?」 「二つ目。なぜ恋人の携帯電話の中を見てはいけない?隠し事は駄目だろう?」 「それから三つ目。他の女のアドレスが何でいるんだ?いらないだろう?」 「4つ目、なぜ君が怒る?私は君との間に何も作りたくないだけなのに。」 「正直に答えてくれ。明を愛しているからしたことだ。怒られた理由を知りたい。」 声は冷厳なままに、重ねる詰問はだんだんと嗚咽交じりになっていく。 「なぜだ。教えてくれ。お願いだ。私が嫌いじゃないなら・・・。」 「ちょ、ちょっと落ち着けよ。律のこときら・・・」 明は興奮する律のとどめる。しかし逆効果だった。 「落ち着け?私は、落ち着いているっ!!」 「いや、でも・・・。」 凄まじい剣幕だった。律は明をがっちりと掴まえる。 逃れようともがくが、そのまま押し倒された。 ぎりぎりと音がしそうなくらい、手には力が入っている。 律に掴まれた肩からは、爪が食い込んで出血していた。 「私が周りから面倒な人間だと思われているのは知っていた。」 「それでも明なら、私の、この性格を理解してくれてると思っていた。」 「だが違った。明も同じだったんだな?私を面倒に思うんだろう?」 般若のような面で明に言葉をぶつけてきた。 明の顔には、律の涙と、噛み締める唇の血がポタポタと落ちてくる。 「それは・・・。」 否定できなかった。 「さっきもそう。君は私がどんな思いで両親のことを告白したか、分かるか?」 『・・・そうだ。喫茶店でもこんなやり取りが・・・。』 ぼんやりと思い出せるが、明の頭はクラクラしたままで働かない。 「なぜ受け止めてくれないんだ?恋人なのに。愛しているのに。セックスまでしたのに。」 「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない」 何無表情だった律の顔が苦しみに歪む。 236 :ヤンデレ素直クール:2010/03/03(水) 01 34 39 ID 29tgcKcv 次の瞬間、明を抑える力が緩んだ。 明は、彼女をはねのけて玄関へと脱兎の如く走りこむ。 背後からは「どうして!」と悲痛な叫び声があがるが無視。 ほとんど体当たりするようにドアを開けた。 転がり込むようにして外に出る。 久しぶりにも思えるほど、朝の光はまぶしかった。 空気が信じられないほど新鮮に感じられる。 一瞬でも気を抜けば、あの手に引き戻されそうな気がして明は走った。 背後から迫る足音は無い。が、怖かった。 目に浮かぶのは、律があの虚ろな目のまま追ってくる姿。 肺が悲鳴を上げるのも構わず、ひたすら家を目指す。 自宅に着いた明は、ほとんど無言で自室にこもった。 妙な雰囲気を察して親が声をかけてくるが無視を決めこむ。 窓の外が気になり、カーテンをきっちりと閉めた。 血の滲む肩がヒリヒリする。 『痛ぅ・・・。一体何なんだよ・・・。』 一息ついた途端、今度は携帯電話が鳴り出した。 『いまはそんな気分じゃないんだよ・・・』 しかし、いつまでもたっても鳴り続ける。相手はたぶん、律だ。 『お願いだから、勘弁してくれ・・・』 明は電源を切って眠った。 律は客間に敷いた布団の上に座り込んだままだった。 明が彼女を押しのけて逃げ出した瞬間から、律は動いていない。 同じ態勢のまま、ただ独り言を呟いていた。 「どうして、どうして、どうして、どうして、どうして・・・」 布団と畳には、彼が倒していった中華粥の残りが染みている。 引っかき続けた畳はそこだけぼろぼろになっていた。 明がなぜあんなに怒ったのか、全く分からない。 『ただ恋人として分かち合いたくてやっただけなのに・・・』 セックスまでしてなぜ明は躊躇したのか。 なぜ自分のことをもっと知ろうとしてくれないのか。 「明はきっと、何か障害を抱えているんだ・・・。」 「私のことを心から好きになれないような。」 もしかしたら、それは女かもしれない。 だとしたら、全て説明がつく。 『明が私を愛しているのは確かだ。でも邪魔があるんだ。』 『きっと明にしつこくする女がいるんだ。そうに違いない。』 律の思考はどんどん飛躍していった。 前向きに、ただ彼との幸せを願いながら。 ※※※※ 投下終了
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2423.html
178 名前:依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE[sage] 投稿日:2011/10/26(水) 23 55 50 ID bE1u59/c [2/4] 非日常のドアは、常に開かれている。 現在、家のリビングでキサラギが泣きながらメシを食っている。 「お、おいしいです……」 などと抜かしているが、キサラギが食っているメシは、本当は俺のもので、キサラギのために作ったものではない。 朝、玄関を開けるとそこでキサラギが泣いていた。 全身を嗚咽に震わせ、力の限り泣いていた。 ご近所の目が痛かった。 キサラギがここにいるのはそういう理由からであって、特にメシを食わせたかったわけではない。 さて、俺はいつ、キサラギの変態ボタンを押してしまったのだろう。 キサラギに出会ったのは、丁度一年程前のことだ。 受験を控えたキサラギは、駅前の本屋で万引きをやらかして捕まっていた。 めっちゃ目が泳いでいた。 受験前の大事な時期だ。報告が学校に行けばどうなるだろう。推して知るべし。 まあ、今後のキサラギの人生の値段はこの時決まったようなものだ。 税込みで530円位だろう。それっぽっちでキサラギは人生棒に振るかもしれない。 人類皆に等しく厳しく冷たい俺だが、さすがにそれは酷かろうと思った。 それで本屋のオヤジの注意を引く。 キサラギ逃亡。 変態誕生の流れだ。 キサラギの前でふてくされているもう一人の変態であるが、キサラギの存在が非常に気に入らないようだ。 それはそうだろう。あまり数が多くては、変態の稀少価値がなくなってしまう。 未夢は眦を吊り上げ、これ以上ないくらいの憎悪を込めてキサラギを睨み付けている。 変態対変態。その対戦には寒気が走りこそすれ、特に興味は湧かない。 「それでキサラギ、お前はなんで泣いていたんだ?」 キサラギは大きく鼻を啜って、箸の動きを止めた。 鼻水と涙でグシャグシャになった顔が痛々しい。それでも食うんだから大した根性だ。 「ぅべっ、リューヤ先輩…捨てられる…げへっ…思って…」 口の中のものをなんとかしろ。 「俺はキサラギと付き合っていない。その表現はおかしいぞ」 「ぅべっ…」 キサラギがご飯を吐き出して泣き始めた。なんと汚い。 さて、どうしたもんか。一人でも手を焼く変態が二人に増えてはたまらん。 「リスカ女だけ…じゅるい、です…」 「知らん!そんなこと!」 できることなら、二人とも消えてもらいたい。 「ウチもぉ…リスカしたら…飼ってくれますかぁ…?」 「飼わん」 「ぅべっ…!」 いかん。 179 名前:依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE[sage] 投稿日:2011/10/26(水) 23 57 48 ID bE1u59/c [3/4] キサラギのヤツ、とうとう嘔吐した。 俺は慌ててキサラギを横にする。 その後は吐瀉物の処理に取りかかる。 泣きながら食うからだ!変態のすることは本当に迷惑だ! 「ぐずっ、リューヤ先輩…やっぱり、優しい、です…」 ふざけるな。 俺の家だ。そのままにしておけないだろうが。 「ごぇっ!」 未夢のヤツが連れゲロした! もうやだぁ… 「ごぇんなしゃあい…」 「ぅべっ…」 未夢の嘔吐を見て更に戻すキサラギ。 辺り一面はもう地獄絵図だ。 もう殺せよ……。 事態を収拾し、やや酸っぱい匂いの漂うリビングで、俺は深い溜め息をついた。 「キサラギ、落ち着いたら帰れよ」 「…イヤです。ウチも…そのつもりで来ましたから…」 「そのつもり?何のことだ?」 「…ウチも、飼ってくれますかぁ…?」 まだ言うか。 「…別に未夢は飼ってるわけじゃない」 「なんで、そんな嘘つくんですかぁ…ウチも…先輩の服着たい…雨の日…」 あれか。 雨の日に未夢が欲求不満から顔を赤くしてたあれか。 つまり、キサラギの変態的言動はジェラシーによるものか。 待て。何故それが飼うという言葉に繋がる。 やはりこいつは… 「変態」 「はい…」 「変態!」 「はい…」 こいつ、本物だ…どうしよう…。 キサラギのサイドテールの髪の毛が、再び湧き出した嗚咽で揺れている。 俺はキサラギの髪を拭ってやる。 「リューヤ先輩…優しい…好き…」 それが大きなミステイク。ゲロが付いていただけなのに。 しかし、どうする?未夢ですら持て余す俺がキサラギをどうにかできると思えない。 キサラギは遊びでない空手をやっている。段位は知らないが、いくつかの大会でトロフィーを貰っている。 十分、俺を殺せる。 OK!新しい変態の誕生だ!! 「わかった…」 自分のものとは思えないような嗄れた声が出た。 「本当ですか!?ウチ、ウチ……!」 大丈夫か、俺?大変なこと言ったぜ? キサラギの目に、じわっと歓喜の涙が盛り上がる。 「これで…ウチもようやく…」 ようやく、なんだろう。分かりたくない。 「先輩の…ペットに…」 「……」 うっとりとするキサラギ。 疲れた…。 もう、百年も千年も眠りたい。 最後に…おめでとう、キサラギ。 新しい変態…。
https://w.atwiki.jp/feltwerewolf/pages/62.html
恋人陣営:本体系 変化系 占い結果 霊能結果 カウント 能力使用 襲撃耐性 村人 村人 村人 強制 なし 勝利条件:ゲーム終了時に自身と片思い相手の生存 始まりの夜に生存者から1人を選択します。 選択した相手の片方を自身との片思いの関係にします。 片思いされた人は無自覚で、元々の能力も失われません。 片思いの相手が死亡した場合、終末ヤンデレは覚醒し勝利条件などが変化します。 覚醒後 占い結果 霊能結果 カウント 能力使用 襲撃耐性 人狼 人狼 人狼 強制 なし 勝利条件:生存者が2人以下になる 片思い相手が死亡した時点で即座に「終末ヤンデレが覚醒しました」と告知されます。 その告知後の占い結果などは上記の通りになります。 毎夜、生存者から1人選択して襲撃します。 この襲撃はヴァンパイアの襲撃と同等です(人狼、妖狐を死亡させることができる)。 カウントが人狼なので、「村村狼ヤ」と残ると人狼の勝利になることや襲撃耐性は持っていないので注意が必要です。 出典:Twitterのツイート
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1488.html
152 :ヤンデレ素直クール:2010/02/20(土) 22 43 39 ID 56PLRE7Q 第三話 3レス消費 明が目を覚ましたのはそれから二時間後のことだった。 窓の外は既に真っ暗だ。 場所は全く知らないどこかの和室。律の家だろうか。 明は布団をごそごそと抜け出した。暖房が効いていて暖かい。 「すいません。」 声を上げてみる。襖の向こうに誰かいる気配は無い。 とは言え、他人の家だ。勝手はできない。 「律さん、いる?」 再び声をかけると、向こうから「すぐ行く」と返事が。 階上から、階段を下りる音が聞こえる。 襖を開けたのはやはり律だった。 「起きたか。喫茶店で突然倒れるなんて驚いたぞ。」 不安そうな顔で腰を下ろす律を見ると、明はなぜか頭痛を感じた。 『そうだ。俺は喫茶店で律と話してて・・・、なんだっけ、何かあった気が。』 「うっっ・・・。ごめん、律さん。俺なんだかよく分かんないけど・・・。」 事情を尋ねようと声を上げた途端になぜか律に遮られる。 「大丈夫だ。店で何かあったわけじゃない。ただ君の体は心配だな。」 すこし強引な律に違和感を感じるが、思考がまとまらない。 「本当に?俺、ちょっと思い出せな・・・。」 「大丈夫だ。言っただろう。それより突然倒れたりして本当に大丈夫なのか?」 「私は明の体調のほうがよっぽど心配なんだが・・・。」 どうやら店のことは話したくないようだ。 思い出せない以上仕方ない、と諦めると明は笑顔で答えた。 「いや、大丈夫だよ。なんだか気分が悪くなったみたいだけど、今は全然。」 そう言うと、律もやっと安心したようだった。 「良かった・・・。」と言いながら顔を綻ばせている。 「大げさだよ。ちょっと気を失ったくらいさ。」 「何を言ってるんだ。大病なのかと本当に心配したんだぞ。」 いつもの凛とした表情でオーバーに言うので、すこし笑ってしまう。 すると、律は困ったような顔で言うのだった。 「私は明の恋人だからな。君のことを心配するのは当たり前だ。」 「うん、ありがとう。心配かけてごめんな。」 まったくだ、という律をみて明は何となく彼女をすこし理解できた気になった。 幸せ、とはこういう気分だろうか。 ※※※※ 153 :ヤンデレ素直クール:2010/02/20(土) 22 46 17 ID 56PLRE7Q その内、何かを取りに律は部屋を出て行った。 身体が心配だから動くなと明に言いつけ襖をしっかりと閉めていく。 『汚れているのだろうか、気にしないのに・・・』 そして、律の先ほどの可愛らしさと告白の時の迫力を思い出していた。 確かに律の明への態度には異常なくらい変動があるのだ。 好きだから、とかいう理由で説明がつくのか、明には分からなかった。 眠りすぎたからだろうか、さっきから思考がうまくまとまらないのだ。 ぼんやりしていると、律が戻ってきた。持ってきたのは鍋と茶碗。 来たときと同じく、襖をしっかり閉めている。 さっきと同位置に座る律の頬は、なぜか少し赤みくなっていた。 『可愛いなあ』などと思っていると、差し出されるレンゲ。 「中華粥だ。元気が出るぞ。」 そう言って律は二人の前に置いた鍋から粥を茶碗に盛り付ける。 しょうがの、食欲をそそる良い香りがしてきた。 「じゃあ、いただきます。ほら、明も。」 あまりに自然な流れで、明もつられてしまう。 「あ、うん。いただきます。」 口に含むと、ごま油の風味が広がる。 続いて海老のプリッとした食感。海鮮粥だ。 しかし、それだけではない、何か独特のコクがある。 「あ、おいしい。」 「ふふ、そうだろう。私の特製だ。」 律も心底嬉しそうな顔をする。見ているほうも満たされるような笑顔だ。 料理の上手さに脱帽しながら、食べていると明は大事なことに気付いた。 「あ、そうだ家に連絡・・・。」 なぜだろうか、完全に忘れていた。明は慌てたが、律は落ち着いている。 「もう連絡しておいたぞ。寝ている間に携帯を見させてもらった。すまない。」 「いや、俺が助けてもらったんだしいいよ。ありがとう。」 「ふふ。ご家族も心配していたからな。後で電話するといい。」 「うん。」 ※※※※ 154 :ヤンデレ素直クール:2010/02/20(土) 22 55 00 ID 56PLRE7Q 食後、明は律とくつろいでいた。 本当は食後に帰る予定だったのだが、律に引き止められたのだ。 家に電話してみると、なんだか変な声で「泊まってらっしゃい」と言われる始末。 幸い、明日は日曜日。昼のこともあるし、明は泊まっていくことにした。 「話したいことがある」と律は言っていた。 それで二人でソファに座り、テレビを見ている。 律は学校で見た事が無いような、甘えた雰囲気だった。 しなだれかかり、何かせがむような目で時おり明を見つめる。 明の緊張が最高潮に達した頃、律が切り出した。 「なあ、明。君が聞いてたことだが。」 「なんで私が明を好きになったのか知りたがっていたな?」 下から見上げるような視線で尋ねる律の表情に明の顔は熱くなった。 「うん。なんで?」 落ち着いた風を装って答える。 「それはな。この前の始業式の時だ。」 律によると始業式の日の小さな騒動がきっかけだという。 教師がペットボトルジュースを式場で見つけて、明たちのクラスを疑った。 そのとき、誰も出てこないのに痺れを切らした明が名乗り出たのだ。 教師はあからさまに明の告白を疑問視したが、それでも仕方なく明を叱った。 何とそれは律のボトルだったのだという。 式の用意が忙しく、うっかり持ってきてしまったそうだ。 片づけを手伝っていた律はその場におらず、後で事情を聞いた。 普段から素直さや自らの正しさを全うする律は、明の行動に衝撃を受けた。 なぜやってもいない罪をやったと言えるのか。 しかもずっと待たされるのが面倒だという理由だけで。 律は石堂明という人間を不思議に思うと同時に心惹かれた。 「もしかしたら、君の打算の無さに惹かれたのかもしれない。」 「私を捨てた両親は打算しかない人間だったし。私は人間不信なんだ。」 「クラスメート達もそうだ。みんな浅い計算で動いてる。」 「でも、君だけは。君だけは違うと、そう思えたんだ。」 話し終えると律は明にキスをせがんだ。 「明・・・キス、してほしい。」 キスをする間も、律はうわごとのように呟き続けた。 「・・・はぁ、・・・君を、ンム、石堂明を愛したい。」 「生きていて、ンン、はじめて、チュッ・・・なんだ。」 どんどんキスは深くなっていく。 「・・・つっ・・・はぁ・・・抱いて、くれ。明・・・。」 そう言いながら律は明の首筋に甘噛みする。 ぐるぐると回る思考のなかで、明はそんな律を抱き寄せた。 気がつけば二人とも裸になってしまっている。 律が明の全身に噛み付くようなキスをしてくる。首筋から出血。 あまり豊かではない胸をギリギリと押し付けてくる。 全身をこすりつけ、噛みつき、爪をたて、体液をなすりあった。 やがて律が凄絶に身体を震わせて気絶するのを見た直後、明も意識を飛ばした。 ※※※※
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2429.html
220 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/10/29(土) 21 56 27 ID MPaMNP4Q 俺の朝は早い。 6時には起床して、朝食と弁当の準備をする。当然だが、仕込みは全部、昨夜済ませている。 ただでさえ早い朝が変態二号ことキサラギの加入で、なおさら早くなりそうだ。 全く、忌々しい。 ふと思う。 「ウチのこと、飼ってくれますかぁ…」 キサラギの変態発言だ。 俺は、未夢を飼っているつもりは一切ない。 だが…こうして食事の準備をして、日常の世話を焼き、健康管理までしている自分がいる。 キサラギの言う通りではないか…。 これはいかん。これは非常によろしくない。 自覚が無いのが特にいかん。 調子に乗っていたのかもしれない。未夢を慣らしているつもりが、実際は俺の方が慣らされていたのかもしれない。 もっと厳しく行くべきか? …いや、いかん。 それをやったら、未夢の場合、命に関わる。キサラギの場合は検討もつかん。 いやいや、そもそもこんな考えをする時点で―― 「お、おはようございます…」 背後から遠慮がちな声。キサラギだ。 キサラギはバスタオル一枚での登場だ。 「先輩…ウチ、服が…」 そう、キサラギのゲロ塗れの服は洗濯したんだった。 キサラギは鳥肌を立てている。 「お前、昨夜はどこで寝た?」 「トイレ、です…」 予想と寸分違わぬ答えに、俺は頭を抱える。 俺の朝は忙しい。キサラギに構う時間は微塵もない。 馬鹿なキサラギを風呂に放り込み、断腸の思いで服を貸す。 「ウチ、ウチ…!ここに来て、本当に良かった…!」 感涙にむせぶキサラギ。 「変態!!」 「はい!……はい!!」 く…コイツ、レベルが上がりやがった。 キサラギは闇雲に経験値を取得しているようだ。 そうこうしているうちに、未夢がやって来た。 「おう、未夢。体の具合は?」 「…しんどい」 やはり病院に連れて行った方がよさそうだ。 男は女の子の事情に疎い。こんな時、どうしていいかわからない。せめて気を使うくらいで。 朝食時、未夢は一切口を開かなかった。 キサラギのことはチラリとも見ない。全身でその存在を否定しているように見える。 一方のキサラギは対照的に敵意を剥き出しにして唸る。 「リスカ女……ウチが来たからには…」 「キサラギ、食わないのなら、下げ――」 「たっ、食べます!食べますからぁ!」 サンドイッチの皿を抱えるようにして隠すキサラギ。 「はむっ…はむっ…おいしい…おいしい…こんな、おいしいものが…」 221 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/10/29(土) 22 01 44 ID MPaMNP4Q 大袈裟な。 敵意を剥き出しにするキサラギと、無視を決め込む未夢。 一体、どちらの方を大きい問題と捉えるべきだろう。 だいたい、俺とこの二人の関係は何なのだ。 …未夢とはキスだってしていない。だがそれ以上のことをした自覚はある。そして、婚約している。 ……なんだこのカオスは。 頭が痛くなってきた。 キサラギはただの後輩だ。しかし、コイツのほぼ全てを俺は見た。そして何を隠そう、俺はコイツを飼うことを承諾している。 い、いかん。カオス過ぎる。 …婚約者とペット… 人として激しく間違っているような気がする。 是が非でも二人を更生させねば。 それ以外に関係収拾の道はない。 そして気になるのが何故か笑うキサラギだ。 「キサラギ、何がおかしい」 「はぁい」 キサラギは嬉しそうに言った。 「ウチぃ…今日、学校辞めて来るんでぇ…」 「あ?」 モジモジしながら、上目遣いにこっちを見るキサラギ。 目眩がした。 「ウチぃ、これからはずっと、ず~っと、先輩のことだけしていられるようになるんですぅ」 「キサラギ…」 「はぁい」 コイツとは、じっくり話し合う必要がある。 「今晩にでも、ゆっくり話そう」 「はぁい、ウチは、先輩だったら、何でもいいですよ?」 くねくねと身をよじるキサラギ 「あのぉ…準備しといた方が、いいですかぁ?」 「何の?」 「ゴム、です…」 かっ、と顔を赤くするキサラギ。 頭の中、ピンク一色に違いない 俺は、深く長い息を吐き出した。 「キサラギ。学校辞めたら、捨てるからな」 「ぇ…?」 「学校行って、しっかり勉強して、キチンと部活動でも結果を出せ。それができないペットはいらん」 顔色を変えるキサラギ。 「え?ちょっ、待って…え?…え?」 「これは命令だ。反論は許さん」 「そんな、そんな……ウチぃ…」 キサラギは納得できないようで何度も首を振った。 「そんなこと、言われたら、ウチぃ…証明できないじゃないですかぁ…」 …ヤバい。 「リスカ女は良くて…ウチは、ダメで…」 ヤバい…なんか、踏んだ…。 その時、未夢がキサラギを見て、嘲笑った。 「リューヤは、未夢のだよ。もう、ずっと前から」 静寂。 「残念だったね」 何でもない朝の一コマを過ごすように、未夢が呟く。 キサラギは俯いて、拳を握り締め、ずっと肩を震わせている。 今日は、長い一日になりそうだ。
https://w.atwiki.jp/darkness00/pages/178.html
カイザーの中で、最もヤンデレな人物の事を指す。 現在はタバサがこの名を所持している。 ヤンデレとは、愛しすぎるがために、ストーカーや殺人などを犯してしまう。 一般人から見ると、ただの変人でしかないが、 裏を返せば「悪い事をしてしまうほど愛してくれる」という事なので、 好きな人はそれなりにいる。 ちなみに、カード化した場合の能力とテキストはこれである。 ヤンデレ神姫 魔法使い族・風・☆8 通常モンスター ATK2500/DEF1900 「バカ野郎」「君が勝利するの禁止!」「私はヲタをも超越する」「ムァァァァックツェルォォォォルィィィィ!!!(マックテローリー)」ゆうきは死んでいいよ、私が今日から音羽の弟じゃ」「恋色・マスタースパーク!!!」「社長命令だ「いいぜぇ…来い…来いよ…俺は…ここにいる!ロリィィィィィィィィィィィィィゼッ!!!(スカイガールズ的な意味で)」 どこからどう見てもネタカードである。 ちなみに、タバサがいずれ書こうとしている小説にて、このカードが登場するかもしれないらしい。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1836.html
571 名前:ほのぼのヤンデレ[sage] 投稿日:2010/09/05(日) 18 09 13 ID 21xiy4T5 [2/6] とある日の放課後。私は人気のない第三校舎の裏に向かっていた。 何故かと問われると、今朝、ベタというかなんというか、下駄箱に手紙が入っていたからである。 字が非常に綺麗で、無心で何度も読み返してしまうぐらい綺麗だった。差出人は無く、文字的に女子からの呼び出しかと思ったが、私は別の可能性も即座に考えた。 最近、なんとなく正義のヒーローごっこで不良共を片っ端から叩き伏せていたから、それについての呼び出しかもしれないと。勿論、不良さん達からである。 まぁ、別に叩き伏せればいいんだし、過剰防衛にならないぐらい。 とりあえず、と、近くに都合良く落ちていた鉄パイプを拾い、私は黙々と足を進める。 鉄パイプを拾ったのは、流石に漫画や小説みたいに一人で何人もぼっこぼっこにはできないから、自衛の為に持っていくだけであって、あくまで自衛。 過剰に防衛するかもしれないけど正当防衛だから問題ない。 で、目的の場所に着いたわけだが、不良さん達はいなく、私の通う高校の制服を着た女の子が一人いるだけだった。 女子からの呼び出しだったか。 ぽいっと鉄パイプを投げ捨てる。女の子が若干怯えていたからだ。 ――それにしても。 目の前の女の子は非常に可愛かった。 艶があり、手触りがとてもよさそうな、今まで見てきた中で最上級の高価さを誇る綺麗な黒髪を、背中の中ほどまで伸ばしたロングヘア。 黒々とした、綺麗で可愛らしい大きな瞳は今は少し不安に揺れている。 それらに加えてさらに、紅くて小さくて愛らしい唇。そして全ての元となる雪のように白いキメの細かい肌。 ――なんというか、二次元幼女がそのまま三次元に迷い込んだような容姿をしている。 つまり可愛い。だが、忘れてはいけない。彼女は私の通う高校の制服を着ているが、ロリなのである。幼女である。身長、150センチぎりぎりいってるかいってないかぐらいだ。 私と20センチ近くはなれている。私服で手を繋いで歩いたら私がロリコンと勘違いされかねない容姿だ。 というか、この短時間で手を繋いで一緒に歩くことを妄想させるとは、なんとも罪な可愛らしさである。 いけないいけない。そろそろ本題に入らなければ。 「それで、何の用だ? 私をここに呼んだのはお前だろう?」 「え、と。はい、そうです」 緊張した表情で返す彼女に、思わず手が伸びそうになる。 何だこの、動く麻薬。可愛すぎる。よく戒めないとついうっかり摂取してしまいそうだ。 「それで、用件は?」 そう訊くと、途端に彼女は頬を真っ赤にして俯き、もじもじしはじめる。何故か少し息も荒い。 それを見て私は―― 「げほっ、がはっ!!」 口から血を吐き出しながら倒れた。受身を取れずに諸に背中を打ちつけてしまう。 現世にこんな少女がいるなんて。彼女は、言葉遣いがアレで、影では愚痴ばっか言ってそうな感じの今時の女子高生とは遠くかけ離れた存在だ。 そして美少女、じゃなくて美幼女。これは、まさに絶滅危惧種。 まさか、悪勢力(主に不良)の間で【断罪者】などという痛い通り名を付けられた私が、たかが可愛い幼女に吐血して地に伏せられるなんて・・・・・・。 さっさと、終わらせなければ、死ぬ。死因、萌死になんてのは許されることじゃない。 「よう、けん、は?」 「そんな死にそうな感じで喋らないでください!」 いやいや、さっさと用件を言ってくれないと血が止まらない。 というか、貴方、姿はロリなのに口調は後輩キャラなんだね。もうちょっと、こう、わがままをよく言う子に育って欲しかったりもしたけど、これはこれで、あり、かも。 「よ、ようけんをいってくれ」 「あ、うぅー」 もう一度繰り返すと、やっぱり頬が真っ赤に染まる彼女。 もしかして、私への告白だろうか? それとも、私の幼馴染である神崎 翔への告白を手伝って欲しいとかだろうか。 多分、後者な気がする。アイツは絶賛ハーレム拡大中だからな。顔もいいし、運動もできるし、勉強もできるし、性格もいいし、チャラくないし。 「散れ!!」 「ふみゅ?!」 しまった、妬みのあまり突然叫びだしてしまった。彼女は相当驚いている。普通驚くだろうから彼女の反応は普通なんだけれども。 572 名前:ほのぼのヤンデレ[sage] 投稿日:2010/09/05(日) 18 15 43 ID 21xiy4T5 [3/6] 「それで、用件は何? どうせアイツなんでしょ? アイツへの告白を手伝ってもらいたいんだよね? あっはっはっはっ。一時でも私への告白かと思った私が馬鹿だった。滑稽だな。 というか前にも数回こんなことがあったな。今回は相手が可愛すぎるから忘れていたが。 あーもう、アイツなんて皆にロリコンロリコン言われて死ねばいいのに。 というかもう刺されなさいよ、あんなに嫉妬されてるんだからそろそろ刺されてくれてもいいじゃないか。 ヒロイン何人だっけ? 担任、生徒会長、私の義妹、アイツの義妹、クラス委員長、お嬢様、風紀委員長、後輩、メガネっ娘、アイドル、クラスメイト。 挙句の果てに、幼女まで?! アイツの攻略キャラの数が多すぎる。 いや、もう何人か病んでいいよ。刺されていいよアイツ。 昼ごはん五月蝿いよ。私もすぐ近くにいるんだから。昼ぐらい静かに喰え。 いや、死ねよもう。主人公体質の癖して鈍感じゃないし、うまく皆を丸め込んでるし、いつも悪い人たちに襲われたときには私を頼るし、その割には見返りないし。 バレンタインなんてアイツのハーレムメンバーの何人から義理チョコを送られるだけなのに対して、アイツはハーレムメンバー以外にも先輩、同級生、後輩からたくさん貰ってるし。 しかも何故か媚薬入っていてアイツ暴走して大変だったし、そうだよね、いつも無表情で無口みたいなキャラ設定が認識されている上に、顔が女の子にしか見えない、というかもはや女の子である私が告白されるはずないもんね。 というか女性としてみればアイドルにも勝てるぐらいのレベルとはどういうこと? 私はニューハーフじゃないもん、男だもん。レズでもないもん、うぅぅぅぅ。」 「あ、あの。鬱宮先輩?」 「ぐすっ、そもそもだな、前提として――え? あっ!」 美少女に話をかけられ、ようやく自我を取り戻す。だいぶ、恥ずかしいところを見せてしまったようだ。というかあんなに長々と喋ってしまうなんて、馬鹿だ、迂闊だ。終わったことだから気にしても仕方ないけれど。 「あ、あのですね、先輩は勘違いをしています」 「勘違い?」 彼女の、さっきから紅みがかっていた頬が更に真っ赤に染まり、首筋までそれは至った。 「わ、私が好きなのは、鬱宮先輩です」 573 名前:ほのぼのヤンデレ[sage] 投稿日:2010/09/05(日) 18 16 53 ID 21xiy4T5 [4/6] 「・・・・・・」 今、彼女なんて言った? 私が好き? フフフフフフフフ、馬鹿にしてはいけない。この私が普通の告白で初対面の女性と付き合うなんてことありえないというのに。 「駄目だな。笑っちゃうぐらいお前は甘い」 「そう、ですか・・・・・・」 彼女があからさまに落ち込むが、勿論私はそんなことは気にしない。 「お前、私のことが好きなのか?」 「好きです!! この気持ちは本物です!」 ロリが自分の平らに近い(つまり平らではない)胸に手を当て、必死に私へと語りかける。 「だったら、監禁でもして私を閉じ込めて、私を脅して、私と付き合えばいいだろう!」 「か、監禁なんて犯罪じゃないですか!」 「その正常な反応が既に私に好意を寄せる者として失格だ。私を愛しているんだったら、私を手に入れられる可能性を100パーセントにするぐらいじゃないと全然駄目だ。例えば、脅したり、気絶させたりしてな」 「じゃ、じゃあ監禁するので付き合ってください!!」 私は手加減して彼女の頭を叩く。 「そこは私の首を絞めたり、ナイフで脅したり、スタンガンで気絶させる場面でしょうが!」 「は、はぃ!」 「というか、面と向かって監禁すると言われても・・・・・・やっぱり強制的な監禁じゃないと萌えないな」 私が馬鹿なことを呟いている間、彼女は慌てて近くに置いてあった自分のバックを探っていた。筆箱を取り出し、そして何かを取り出す。 ハサミだった。まぁ、合格。 彼女がそれを私の方に突き出しながら、また告白をし始める。 「わ、私と付き合ってください。付き合ってくれないと、こ、殺します」 がくがくぶるぶるでまったく怖くなかったけど、想像して欲しい、可愛い幼女が、ハサミを持って、付き合わないと殺すと言う、震えながら。 とても萌える。生きた麻薬とはこのことだな。一日一回拝まないと吐血しそうだ。 「そうだな、私と付き合うんだったら毎日、電話100回、メール100回が課題だな」 「が、がんばります」 「それと、登下校は、んー、帰るときは一緒でもいいけど、登校中は私の後を隠れながら移動しろ」 「先輩の家は近いから問題ないですけど、どうしてですか?」 「可愛い後輩が先輩をストーカーするなんてとても萌えるじゃないか」 「ぅ。そ、そうですか」 「あれ? そういえば何で私の家を知っているんだ?」 そう訊いた瞬間、いきなり彼女は慌て始めた。 「い、いや。あの、先輩の妹さんから訊いたんです。決して後をつけてたとかじゃありません!」 「ふぅん。まぁ、いいや。それじゃ、さっそく一緒に帰るとしよう。その間に、私と付き合うときの心構えを叩き込んでやる」 「はい!!」 幼女が、私に向けて満開の笑みを浮かべた。それを見た私は大量の血を口から吐き出し、ぶっ倒れたことは言うまでもない。 574 名前:ほのぼのヤンデレ[sage] 投稿日:2010/09/05(日) 18 18 51 ID 21xiy4T5 [5/6] そして現在、帰宅途中に至る。 「まずだな、私に近づく女は全員殺せ。勿論、冗談じゃないぞ」 「うぅぅ。そんなこと出来るわけないじゃないですか」 「今のところは私に近づく女性なんて深言ぐらいだから別に殺さなくてもいいが」 ちなみに深言とは彼女のことである。言寄深言(ことよりみこと)これが彼女のフルネームだ。ちなみに私は鬱宮病(うつみややまい)だ。非常に微妙な名前である。 「とにかく、私を愛するんだったら、私は狂愛を求める。たとえ体が他の男に支配されても、心だけは私へとあり続けるような、そういう女性が一番だ」 「大丈夫です! ちゃんと病のことは愛しています!」 ちっこい少女に名前を呼び捨てにされ、愛を叫ばれる。これ以上萌える場面が他にあるのだろうか? ちなみに、名前の呼び捨てはお互い合意のもとで、私も彼女の名前を呼び捨てで呼んでいる。私としてはただ単に少女に名前を呼び捨てにしてもらいたかっただけなのだが。 「そして、三日以内に私の部屋に盗聴器を仕掛けること。勿論、家族や私に見つからないように。本当は今日中にしてもいいぐらいだが、深言は素人だからな、三日以内で許してやる」 「あ、ありがとうございます?」 色々と話している間に、どうやら深言の家に着いたらしい。確かに私の家から近い。 「私の家はここです。送ってくださってありがとうございました」 そのまま彼女は家に帰ろうとするものだから、思わず肩を掴んで止める。 「どうしたんですか?」 「そこは普通キスをするところでしょうが! 家に誘い込んで眠らせたり、今ここでスタンガンも可!!」 「えぇ?!」 「どうした? まさかとは思うが、私を愛する者として別れ際に私にキスをするぐらいは常識だよな?」 キスをしやすくするために少し屈んであげる。 「うみゅぅぅ。は、恥ずかしいです」 「順調に行けばどうせそのうちそういう関係になるのだから、大人しくキスぐらいはしなさい」 「わかりました! えぃ!」 私の後頭部に手を添え、一気にキスをしてくる深言。彼女はちゃんと当たる瞬間に減速し、歯がぶつかるということはなかった。 問題はこの後だった。 唇と唇が触れ合った瞬間、言葉では言い表せないような甘さが頭を直撃し、一瞬にして理性が崩壊した。 二秒で崩壊した理性を理性と呼べるのかどうか定かではないが、私は彼女の家の前で、堂々と彼女の口腔内に舌を進入させてしまったのである。 だが、理性が崩壊したのだから仕方がない。彼女が驚いているのを確認しつつも、彼女の暖かい口の中で私の舌は暴れまくっている。 必死に舌を奥に突き入れ、深言の反応がアレなところを重点的に責める。そしてたまに焦らす。彼女の後頭部を押さえつけているため、顔が離れるなどということは一切起きない。 そんなことが続いて五分ぐらい経っただろうか。舌が疲れるなどということがまったくなく、もうずっとディープキスだった。途中からは彼女も積極的に舌を絡め、もはや二人の顔面は唾液塗れである。 それでもディープキスを続けるものだからもし人が見ていたら呆れるしかないだろう。 「んっ、んっ、んっ。ん、んんんんん!!」 彼女がビクビクと体を震わせ、若干私に体重を預けてくる。どうやらイってしまったらしい。 深言がイってなおディープキスは続いた。達した後だからか、少しの間、彼女の舌は動かなかったが、すぐにまた絡まり始める。 どうしよう。これ、本当に麻薬だ。頭が甘く痺れて、蕩けて、何を考えているかわからなくて。もうぐちゃぐちゃで。 十分後、ようやく私は深言を解放した。それまでに彼女は三度もイき、私は嬉しく思った。彼女を感じさせることができたのだ。 まさかキスだけで行くなんて事が現実で起こりえるとは思いもよらなかったが、多分、愛故だろうと勝手に納得しておいた。 頬を染め、荒い息をついている、蕩けきった表情の幼女の頬に軽くキスをしてあげる。というか、深言も我に返らないと危ない人だ。 薬をやっているようにしか見えない。スカートからはぽたぽたと何かが太ももを伝って垂れてきている。名称は言えないけれど。 「それじゃ、明日私をストーカーするように」 「や、病」 「何?」 「ぁ、愛してます」 「フフフフ、私も愛してるよ」 もう片方の頬に軽くキスしてあげる。 「ばいばい」 未だに呆けている彼女を尻目に、私はようやく家へと向かった。 「気持ちよかったな・・・・・・」 口の中に残っている深言の唾液をこくこく飲み干しながら、上機嫌に家の中へ入る。 「ただいま」 明日が楽しみだった。 それと、深言はちゃんと電話100回、メール100回をこなしたのである。ご褒美に何をしてあげようと考えつつ、上機嫌のままベットに横になる。 そういえば、何で私のことが好きになったのか訊いていなかったな。明日にでも訊くか。 ここでようやく私の意識は闇の底に落っこちた。 続くんだろうか?
https://w.atwiki.jp/espada/pages/145.html
ヤンデレ推進 党員リスト 更新日 家門Lv 家門名 ラダー 備考 09 3/7 25+3 レーテル 0/0 09 5/18 14+3 アーデルカッツェ 0/0 党首、放置被せるのやめてろってw -- 名無しさん (2010-05-01 09 18 00) 名前 コメント